天童荘

天童荘

旬の逸品

重陽の煮物椀

白露。秋分。重陽
重陽の節句は平安時代に中国から伝わったもので、もとは旧暦の99日、現在の10月中旬にあたりました。
秋の花と言えば菊、ちょうど菊が美しい時期でございます。
菊は邪気を払い、長寿に良いとされて行事に用いられたために「菊の節句」とも呼ばれています。
食欲の秋、秋の節句は旬の食材が豊富でございますので、栗に秋茄子、食用菊、菊酒などで不老長寿の願いを込めます。
そしてなんと食用菊の生産量日本一を誇る山形。
山形の食用菊のなかでも、薄紫でシャキシャキとした食感が自慢の菊が「もってのほか」です。
名前の由来には「天皇家の御紋である菊を食べるのはけしからん」という説や、「もってのほか美味しい」という意味も含まれているとされています。 ともあれ山形では、秋の味覚として古くから郷土の味として親しまれてきました。
食用の菊ではございますが、やや苦みがありますので沸騰した湯に少量の米酢を入れて軽く湯がき、ざるに揚げ流水でさらして出汁に浸します。 せっかくの菊花がお椀の底に沈んでしまわないように、一番出汁で薄く葛をひいてとろみをつけています。この菊花入りの出汁を張って、真ん中に地鶏そぼろを射込んだ百合根饅頭を入れました。
日本料理のメインディッシュと言われる煮物椀のなかでも、特に繊細で手間暇かけたとても美しい旬の逸品でございます。
秋のひと夜、山形で菊の宴をお楽しみください。
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